投資信託は「プロに運用を任せられる便利な金融商品」として知られていますが、国内で販売されているファンドは6,000本以上あり、その中から自分に合ったものを選ぶのは容易ではありません。筆者も投資を始めた当初、銀行の窓口で「おすすめ」と言われたファンドを購入して手数料が高かったと後から気づいた苦い経験があります。この記事では、その失敗から学んだ「投資信託の正しい選び方」を5つのポイントとして整理します。なお、この記事は情報提供を目的としており、投資助言には該当しません。
投資信託の基本:仕組みと種類を理解する
投資信託とは、多くの投資家から集めた資金をまとめてひとつのファンドとして運用し、その運用成果を投資家に還元する金融商品です。1万円程度から始められるため少額でも分散投資が可能で、運用はファンドマネージャーや運用会社が行います。
投資信託の主な種類
| 種類 | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|
| 株式型 | 国内外の株式に投資 | 高い成長期待・リスクも高め |
| 債券型 | 国債・社債などに投資 | 値動きが穏やか・リターンは控えめ |
| バランス型 | 株式・債券・REITを組み合わせ | 分散効果で値動きを抑制 |
| 不動産型(REIT) | 不動産投資信託に投資 | 配当(分配金)が高め |
| インデックス型 | 株価指数などに連動 | 低コスト・長期投資向き |
| アクティブ型 | 指数を上回る成果を目指す | コスト高め・高リターンの可能性もあり |
新NISAのつみたて投資枠で購入できるファンドは金融庁が厳選しており、長期の積立・分散投資に適した条件(ノーロード、信託報酬の上限など)を満たしたファンドのみが対象です。迷ったらまずつみたて投資枠の対象ファンドから選ぶと、ある程度品質の保証された候補に絞れます。
ポイント1:信託報酬(コスト)を最優先で確認する
投資信託を選ぶ上で最も重要な指標のひとつが「信託報酬」です。信託報酬とは、ファンドを保有し続けることでかかる年間のコストで、純資産総額から毎日少しずつ差し引かれます。
信託報酬が長期成果に与える影響
例えば、年率5%のリターンが期待できるファンドで、信託報酬が0.1%と1.5%のものを比較してみましょう(手数料以外の条件が同じとして計算)。
| 投資期間 | 信託報酬0.1%の場合 | 信託報酬1.5%の場合 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 10年後(月3万円積立) | 約465万円 | 約436万円 | 約29万円の差 |
| 20年後(月3万円積立) | 約1,235万円 | 約1,091万円 | 約144万円の差 |
| 30年後(月3万円積立) | 約2,500万円 | 約2,060万円 | 約440万円の差 |
※上記は概算シミュレーションであり、将来の成果を保証するものではありません。実際の運用成果は市場環境により大きく異なります。
信託報酬の差が0.1%と1.5%では、30年間で440万円以上の差になることが分かります。筆者が銀行窓口で購入した「おすすめファンド」は信託報酬が年率1.5%以上のアクティブファンドでした。後からインデックスファンドの存在を知り、乗り換えた経緯があります。信託報酬が年率0.2%以下のファンドを基準に探すことをお勧めします。
ポイント2:インデックスファンドとアクティブファンドの違いを理解する

投資信託は大きく「インデックスファンド」と「アクティブファンド」に分けられます。この違いを理解することが、ファンド選びの核心です。
インデックスファンド
日経平均株価やS&P500などの株価指数に連動することを目指します。ファンドマネージャーが銘柄を選ぶ必要がなく、機械的に指数の構成銘柄を保有するため運用コストが低くなります。長期的には大半のアクティブファンドをアウトパフォームするという実証研究も多く存在します。
アクティブファンド
指数を上回る成果(アウトパフォーム)を目指してファンドマネージャーが銘柄を選択します。高い調査コスト・運用コストがかかるため信託報酬は一般的に高くなります。稀に長期的に指数を上回り続けるファンドもありますが、どのファンドが将来もアウトパフォームするかを事前に見分けることは難しいとされています。
| 比較項目 | インデックスファンド | アクティブファンド |
|---|---|---|
| 信託報酬 | 低い(0.05%〜0.2%程度) | 高い(0.5%〜2%以上) |
| 目標 | 指数に連動 | 指数を上回る成果 |
| 長期実績 | 安定的(指数通り) | まちまち(多くは指数に劣後) |
| 透明性 | 高い(指数の構成通り) | 低い(マネージャーの判断次第) |
| 初心者向けか | 向いている | 銘柄選択眼が必要 |
投資初心者には、まずインデックスファンドから始めることを強くお勧めします。コストが低く、長期的な市場の成長をそのまま享受できるという特性が、長期積立に向いているためです。実際に使ってみると、インデックスファンドは値動きの理由が明確で、毎日のニュースと照らし合わせて「なぜ上がったのか・下がったのか」を理解しやすいという利点もありました。
ポイント3:分配金の仕組みと「毎月分配型」の罠を知る

投資信託の中には「毎月分配型」と呼ばれるファンドがあり、毎月決まった金額の分配金を受け取れます。一見便利に見えますが、長期資産形成の観点からは注意が必要です。
分配金の仕組み
分配金は「ファンドの利益から支払われる」と思っている方も多いですが、実際には「特別分配金(元本払戻金)」として元本の一部を返還している場合があります。つまり、毎月分配金を受け取っていても、それはファンドの純資産が減っているだけで、実質的な資産は増えていないというケースがあるのです。
長期積立に向かない理由
複利効果を最大化するには、運用益を再投資して雪だるま式に増やす「分配金再投資型(無分配型)」が有効です。毎月分配型を選ぶと、運用益が外に出てしまい複利効果が失われます。
| 分配型 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 無分配型(分配金なし) | 収益をファンド内で再投資。複利効果が最大化 | 長期積立で資産を増やしたい人 |
| 毎月分配型 | 毎月現金を受け取れる。複利効果は低下 | 定期的な現金収入が必要な人(リタイア後など) |
| 年1回・2回分配型 | 年に数回分配金を受け取る | 中間的な選択肢 |
新NISAのつみたて投資枠で積立しているうちは、基本的に「無分配型(分配金なし)」または「分配金再投資型」のファンドを選ぶと複利効果を最大に活かせます。
ポイント4:純資産総額で安定性を確認する
どれほど信託報酬が低くても、純資産総額(ファンドの規模)が小さすぎるファンドには「繰上償還」のリスクがあります。繰上償還とは、ファンドの運用が途中で打ち切られることを指し、希望しないタイミングで投資信託が解約されてしまいます。
純資産総額の目安
- 100億円以上:安定的な運用が継続できる最低ライン
- 500億円以上:繰上償還リスクはほぼなし
- 1,000億円以上:規模的に非常に安定
- 1兆円以上:国内トップクラスの規模
eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)の純資産総額は4兆円を超えており、繰上償還のリスクは事実上ありません。一方、新しく設定されたファンドや人気が低下したファンドでは純資産が少ないものもあるため、確認が必要です。
ポイント5:購入時手数料(販売手数料)がかからないか確認する
投資信託を購入する際にかかるコストのひとつが「購入時手数料(販売手数料)」です。銀行や証券会社の窓口で購入する場合、3〜4%の購入時手数料がかかるファンドもあります。
筆者が銀行窓口で最初に購入したファンドは、購入時に3.3%の手数料が差し引かれました。10万円を投資した時点で3,300円が消えていたわけです。これは最初から3.3%のマイナスからのスタートを意味します。
ノーロードファンドを選ぶ
購入時手数料が0円のファンドを「ノーロード」と呼びます。SBI証券・楽天証券・マネックス証券などの主要なネット証券では、取扱い投資信託のほぼ全てがノーロードで購入できます。銀行窓口や対面証券会社では手数料がかかることが多いため、投資信託をコストをかけずに買うにはネット証券を利用するのが基本です。
| 購入場所 | 購入時手数料 | 備考 |
|---|---|---|
| ネット証券(SBI・楽天等) | 0円(ノーロード) | 取扱いほぼ全品ノーロード |
| 銀行窓口 | 0〜3.3%程度 | 窓口販売ファンドは手数料あり多い |
| 対面証券会社 | 0〜3.3%程度 | 担当者のアドバイス込み |
初心者におすすめの投資信託銘柄
上記5つのポイントを踏まえた上で、投資初心者が新NISAで積立を始める際に検討しやすいファンドをまとめます。
| ファンド名 | 信託報酬 | 投資対象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) | 0.05775% | 全世界株式 | 1本で世界分散。初心者の定番 |
| eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 0.09372% | 米国大型株 | 米国集中。国内最大規模の人気ファンド |
| eMAXIS Slim バランス(8資産均等型) | 0.143% | 株式・債券・REIT均等 | 値動きを抑えたい人向け |
詳細な比較はインデックスファンドおすすめ比較10選の記事でも解説しています。
投資信託を始める前に知っておくべきリスク

元本割れのリスク
投資信託は元本保証の金融商品ではありません。投資した金額が減る可能性があります。特に株式型ファンドは短期間で大きく値下がりすることがあります。
為替リスク
外国の株式や債券に投資するファンドは、円高になると円換算での価値が下がることがあります。全世界株式ファンドや米国株ファンドも、円高局面では為替の影響を受けます。
流動性リスク
投資信託は基本的に「換金の申込みから2〜3営業日後に代金受取」となるため、株式のようにリアルタイムで売却することはできません。急いで現金が必要な場合に対応できないことがあります。生活防衛資金は別途用意した上で投資を始めましょう。
投資信託を選ぶ際は、(1)信託報酬の低さ、(2)インデックスファンドを優先、(3)毎月分配型を避けて無分配型を選ぶ、(4)純資産総額100億円以上の規模があるか確認、(5)購入時手数料がかからないネット証券で購入する、この5点を押さえれば大きな失敗を避けられます。
- インデックスファンドおすすめ比較10選|新NISAで買うべき銘柄
- 新NISAの始め方完全ガイド|口座開設から銘柄選びまで
- つみたて積立投資枠の実績を公開|3年間の運用成績と銘柄選び
- 投資初心者が最初にやるべきこと5選
※この記事は情報提供を目的としており、投資助言には該当しません。投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります。投資判断はご自身の責任で行ってください。記載のコスト・データは2026年3月時点の情報であり、変更される場合があります。